No.36 オトシブミ観察記

 皆さん、オトシブミをご存知でしょうか。オトシブミとは、木の葉を巻いてゆりかごをつくる小さな昆虫です。そのゆりかごの中に卵を産みつけ、その中で幼虫が育ちます。成虫は種類によって色や形が様々で、ユニークな姿をしています。分類の仕方によって違いがありますが、日本に20種類ほどいるそうです。

 名前の由来となった“落とし文”は、公然とは言えないことや秘かに想う恋心を伝えるために、伝えたい人の近くに落として拾わせた置手紙のことで、オトシブミが葉を丸めて巻物状にするのがそれによく似ていることから名づけられたそうです。ちょっとロマンチックですね。

 

 私は、パークレンジャー活動をするようになってからオトシブミについて教えてもらって、その後ゆりかご(揺籃)は何度か見つけたことがありますが、成虫は一度も見つけたことがありませんでした。

 一緒に活動する方からは、「揺籃を作る様子を2時間かけてずっと観察していたことがあるよ~」という話を聞いていましたので、自分も「成虫に出会いたい」、「揺籃を作る様子を見てみたい」という思いをずっと抱いていましたが、相手は体長わずか数ミリ程度の小さな昆虫ですので、なかなか見つけることができませんでした。

見つけたオトシブミ。すぐに葉の裏に隠れた。
見つけたオトシブミ。すぐに葉の裏に隠れた。

 今年こそはという思いで、先日園地へ行って探してみました。以前揺籃を見つけたあたりを探してみようと思い小路を歩いていると、ちょうど目の高さあたりに、栗の木の枝が道を横切るように伸びていて、何気なく見てみると小さな虫が2匹、葉っぱの上にいるではありませんか。もしやと思い近づいてじっく

り見ると、図鑑で見たあのユニークな形、間違いありません「オ・ト・シ・ブ・ミ」です!
思わず、“あっ、おった~!”と小声でつぶやいてしまいました。

最上部が切り込まれた木の葉。風で揺れます。
最上部が切り込まれた木の葉。風で揺れます。

 そのうちの1匹は、こちらの気配に気づいたのでしょうか、すぐに葉の裏に隠れてしまいました。もう1匹は葉の裏でじっとしており、よく見るとその葉は上部が9割方カットされていて、まさにこれから揺籃を作ろうとするところでした。この絶好のチャンスを逃すまい!”と急いでカメラをセットしましたが、あまりに興奮していたのか、ここで大きなミスをしていることに気付きました。

 私は、葉の表側にカメラをセットしていたのですが、よく考えてみると、これまで見つけた揺籃はすべて葉の裏側を表にして巻かれていました。そうです、オトシブミは葉の裏側を表にして巻くんですよね。ということは葉の裏側に回って観察しなければなりません。

“皆さん観察するときは葉の裏側に回りましょう!”

  主脈部分を何度も上下に行ったり来たり。
  主脈部分を何度も上下に行ったり来たり。

 急いで葉の裏側にカメラをセットし直してじっくり観察していると、葉の主脈のあたりを何度も上下に

行ったり来たりして、少しずつ葉を二つ折りにしていきます。あの小さな体ですごいパワーです。しかし

疲れて休憩しているのでしょうか、ときどきじっとしています。

 ここで、もう一つわかったことがあります。最初に葉の上部を主脈部分だけを残してカットしていますので、風で葉が揺れます。他の葉はほとんど揺れていなくても、この葉だけは少しの風でもやたらに揺れるのです。そのせいで、撮影には苦労しました。なかなかピントが合いません。それでもオトシブミは振り落とされることなく必死にしがみついています。“すごい!、えらい!”

力強く葉を二つ折りにしていきます。
力強く葉を二つ折りにしていきます。
一番下まで丁寧に折り曲げています。
一番下まで丁寧に折り曲げています。

一番下から器用に葉を巻き始めました。
一番下から器用に葉を巻き始めました。

 二つ折りが完了すると今度は葉の一番下から、器用に葉を巻きだしました。ここからの作業は意外に速く感じられましたが、葉を最上部まで巻き上げるとまたしばらくじっとしています。“頑張れ、あと一息や~!” 見ているこちらも力が入ります。その後しばらくして再び動き出し、みごとに最上部を切り落としました。“お~、よく頑張ったな~。感動した~”。結局、私も作業の途中からでしたが1時間半ほど見入ってしまいました。

 誰に教えられたわけでもないのに、巧みに揺籃を作る姿に本当に感動しました。葉を切り落とした後はしばらく葉の上で休憩していましたが、そのうち知らぬ間にいなくなっていました。

葉を巻き終えたオトシブミ。同定は難しい。
葉を巻き終えたオトシブミ。同定は難しい。

 図鑑で調べてみると、私が出会ったオトシブミはヒメクロオトシブミに近い体型ですが、はっきりと同

定するのは難しそうです。詳しい方がおられましたらご教示ください。
 葉の巻き方にも色々あって、右巻き、左巻き、単裁型、両裁型など同じ個体がいろんな巻き方をするそ

うです。
 また、オトシブミの幼虫には寄生蜂が来るらしく、その寄生蜂の種類と揺籃の巻き方に関係があるという記事も出ていました。なかなか興味深いですね。そういえば私が観察している間も寄生蜂のような虫が葉の上をうろうろしていました。

          動画にしてみました。風で揺れて撮影には苦労しました。
          動画にしてみました。風で揺れて撮影には苦労しました。

 

 オトシブミに関しては、オトシブミハンドブックなどの図鑑も出版されていますし、YouTubeにも動画が出ています。興味のある方は調べてみてください。そして、機会があれば是非観察してみてください。(ogi)

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