2023年度の活動報告

くろんど園地 ミズバショウの株数調査 2024/3/18

ミズバショウの株数調査
ミズバショウの株数調査

  先日2/24時点で株数調査をしましたが、前回2022年に数えた時期(2022/3/21)より1か月早く、まだ芽が出ていないと思われるものがあったので再度数えなおしました。

その結果1400株を確認しました。

 2022年の調査で八ッ橋のミズバショウは2400株はありましたので、イノシシの侵入によって1000株ほどが減ったことになります。

                          (2024/3/19 T.T) 

 

調査区画と株数
調査区画と株数

くろんど園地 二ホンアカガエルの産卵状況 2024/2/24

 

 今年のニホンアカガエルの産卵の状況を写真でご覧ください。

さんさくの池は年明けから干上がって産卵は期待できそうにありません。

応急的に池の水の落ち口付近にトロ舟を二つ埋め込んでいます。

写真1 カタクリの森前の湿地
写真1 カタクリの森前の湿地

 

 カタクリの森前の湿地ではイノシシが入った跡の水たまりのに10個ほどの卵塊を確認。すぐそばに流水がありますが、そこには産んでないようです。

写真2 やすらぎの池の入口の水たまりの卵塊
写真2 やすらぎの池の入口の水たまりの卵塊

 

 やすらぎの池入口にも産卵が見られます。

写真3 さんさくの池下の水たまりの卵塊
写真3 さんさくの池下の水たまりの卵塊

 さんさくの池下には幾つかの水たまりがあり、産卵が見られます。

写真4 交歓広場の管理道側山側の水溜まり
写真4 交歓広場の管理道側山側の水溜まり

 

イノシシが掘り返した後にできたと思われる水たまりに10個ほどの卵塊を確認。

くろんど園地 ミズバショウの株数調査 2024/2/24

 

 2022年3月に調査してから2年ぶりにミズバショウの株数を調査しました。昨年の夏にイノシシが八ッ橋に入ってミズバショウの生育地が荒らされてしまいました。今回は残った株がどのくらいあるのか調べるのが目的です。 

 

図1. ミズバショウの株数調査結果
図1. ミズバショウの株数調査結果

2024/2/24時点の株数

 

 ミズバショウの株数調査は森林整備部の皆さんに協力いただき、湿地内に白い梱包ひもを引いて8つの区画を作って各区画の株を数えてもらいました。

結果は図1の通りですが、八ッ橋のミズバショウの株数は約1000株(※)と言う結果でした。

 

2022年の調査では八つ橋のミズバショウは2000株を越えていましたので、今は半減したことになります。又、前回は八ツ橋以外の湿地にもミズバショウが200株ほど見られましたが、何れもイノシシが入り、カタクリの森前、さんさくの池、やすらぎの池などのミズバショウはなくなっていました

 

※注

 今回の調査と前回と異なる点は調査日です。前回は3/21でしたが、今回は

 2/24と一か月早い調査となっています。ミズバショウは夏に枯れて秋には

 冬芽を出しますので現在芽が出ているものが全てだと思われますが、念の

 ため3月にも調査する予定です。(2024/2/25 T.T)

 

調査の様子 

 

くろんど園地 カタクリの森

開花・生育状況等の調査・観察レポート(2023)

 2014/10に植栽された、カタクリの個体群の維持/成長の予見を目的として、2017年春から、カタクリの森全域の開花数と、定点観測地点における実生と若い個体の生育状況とを、調べています。

【要約】 

<今年の調査>

・開花数:昨年から3割減少して約700、一昨年とほぼ同数に戻る。原因は昨年増加の反動か?春先の高温少雨などの気象条件か?

・実生:開花数が多い所中心に、200以上発生。

・訪花昆虫:ビロウドツリアブ以外に訪花昆虫を観察できず。マルハナバチの仲間がカタクリの植栽地の地面(巣穴)に入っていくところを観察、送粉に関与している可能性あり。

・結実:定点観測地点では開花に対する結実割合が例年より低め。但し、調査箇所に隣接する開花が密集していた箇所では実が多く実っていた。

 

図1 開花数等調査のまとめ
図1 開花数等調査のまとめ

 <個体群の維持/成長の考察>

・密集して開花している箇所とその周囲で、種から育った小葉個体が増加し新しい群集が形成されつつあり、植栽された個体群が今後維持されそう。

・ただ、6年目の個体でも葉の長さがまだ4cm程度で、順調に育っても開花まではまだ数年はかかりそう。

・開花個体は、毎年開花し続けるのではなく、年により花と大きな葉の間を移行している。また、イノシシの被害後、1~2年で開花するまで復活している。

 調査の主目的である、植栽のカタクリ個体群の維持/成長の予見に対し、新しい個体群の形成が観察でき、今後も維持できそうな感触がつかめた事から、今年で全域の開花数の調査・報告に区切りをつけて、今後は新しい個体群の状況を見守っていきたいと思います。

【本文】

 

(1)開花の状況

 2019年のイノシシ被害を受けて、2020年に半分以下に激減したあと、2021年、2022年と増加傾向にありましたが、今年(2023年)は昨年の973から約3割減少して706になり、一昨年とほぼ同数に戻りました(上記図1:まとめ、図2:景観a,b)。開花数の多い領域全てで開花数が減少、または、ほぼ同数となっています。なお、山側南側が2021年にイノシシ被害を受けて、今年の開花数が83->26に減少しており、この数を補正すると、2023年は2021年の729を上回るような傾向であったと考えます。

 開花数減少の原因としては、ここ2年の開花数増加に対する栄養状況の悪化や、春先の高温少雨などの気象条件が考えられますが、よくわかりません。

 今年は、山側の下草刈りを深く行って頂いたので、これまでササに隠れていたカタクリがよく見えるようになりました(図2 c)。

図2 カタクリの森 開花時の景観
図2 カタクリの森 開花時の景観

(2)実生、および、若い個体の生育状況

 実生も若い個体も、従来から多かった山側(南北両側)と、区域Aを中心に開花が多い所に集中しています(図1)。定点観測地点では、実生と若い個体が多く(図3)、実生はコドラードDでは87、コドラートAでは72あり、全体で200以上はあると考えられます。一方で、なぜか今年は山側北側で実生が少なかったです。

 定点観測していた2018年生の実生は、2021年のイノシシの侵入被害を受けて、2022年は姿が見えませんでしたが、驚いたことに今年ほぼ復活して、4cm程度に成長しています(図3右下)。

図3 定点観測地点の生育状況
図3 定点観測地点の生育状況

(3)結実の状況

 今年も全域で実は数多く見られました。定点観測地点では、結実数/開花数がコドラートA、Dでそれぞれ30%、60%と、ここ3年間の値よりも低くなりました。但し、調査箇所に隣接する開花密集箇所では実が多く実っていたので、調査箇所の開花数減少が影響しているのかもしれません。

 

(4)訪花昆虫

 今年もビロウドツリアブ以外は観察できませんでした [1]*1。ビロウドツリアブ以外は2017年のハナバチの仲間(種名不明)だけです。ただ、開花数調査中にマルハナバチの仲間 [2](時期的に越冬女王か)が地面(巣穴)に入っていくところを観察しました(図4左)。また、結実調査の日にも、マルハナバチの仲間が地面(巣穴)に入っていくところを観察しました(図4右)。早春のマルハナバチは、巣つくりに忙しく、カタクリの花を訪れることが稀らしいのですが [3]、植栽地の真ん中に巣を作っているとすれば、マルハナバチが訪花している可能性はあると思います。

今年、開花数の調査中に観察した昆虫は以下の通りです。

ビロウドツリアブ(訪花確認)、マルハナバチの仲間、ヒメハナバチの仲間、ナミハナアブ、キチョウ

図4 調査中に巣穴に入ったマルハナバチ
図4 調査中に巣穴に入ったマルハナバチ

(5)個体群の維持/成長の考察

 調査を開始した2017年から2023年までの定点観測地点での観察から次のことがわかりました。

 

・新しい群集の予備軍形成

 2017年から2023年までの、大きさ毎の個体数の変遷をタイムラプス風動画にしてみました(下記動画)。密集して開花している箇所とその周囲で、毎年多くの種が供給されて、種から育った小葉個体が増加し、新しい群集の予備軍が形成されつつあります。ただ、6年目の個体でも葉の長さがまだ4cm程度で(図3右下)、このまま順調に育っても開花まではまだ数年はかかりそうです [1]*3

・開花と大きな葉の間の移行

 開花個体は、毎年開花し続けるのではなく、年により花と大きな葉の間を移行しています。2017年から2023年までの変遷をタイムラプス風動画に(下記動画)、なお、コドラートA,Dともに、イノシシの被害を受けて、その翌年に、多くの個体が地上から姿を消し、花の数も減少しましたが、1~2年で開花するまで復活しています(図5)。

図5 定点観測地点における、花と大葉間の移行
図5 定点観測地点における、花と大葉間の移行

・個体群の維持/成長の予見

 植栽された個体群が今後維持/成長できるかどうかは[2] 、①植栽された個体群から種が供給されること、②種が花を咲かせることができる個体に成長すること、③イノシシの被害や災害、天候不順などの悪影響を克服すること、が必要です。ただし、①では植栽個体が今後、何年間、開花して種を供給し続けるのか、②では種が花を咲かせるまで何年かかるのか、といったこの植栽地固有の状況を考慮する必要があり、予見は難しいのですが、文献[1]*2の安定した群集中の各サイズの割合を参考にして、大葉+開花と小葉の割合を0.45を見積もると、花が密集する定点観測地点の近辺に限れば、植栽された個体群が今後維持されるように思います(図6)。

図6 定点観測地点における小葉・実生の増加と今後の予見
図6 定点観測地点における小葉・実生の増加と今後の予見

おわりに

 

 昨年イノシシの被害から開花数が回復しましたが、今年は、昨年増加の反動でしょうか、一昨年と同等に戻ってしまいました。

 一方、定点観測地点での観察を2017年から2023年まで通して見てみると、毎年多くの種が供給され、種から育った小葉個体が増加し、新しい群集の予備軍が形成されつつあります。今後の予見は難しいですが、花が密集する定点観測地点の近辺に限れば、植栽された個体群が今後維持されるように思います。

 

 調査の主目的である、植栽のカタクリ個体群の維持/成長の予見に対し、新しい個体群の形成が観察できたことから、今年で全域の開花数の調査は区切りをつけて、今後は新しい個体群の状況を見守っていきたいと思います。

 

 森林整備のみなさまには、下草刈り、イノシシの忌避対策、寒冷紗設置など、多大の尽力ありがとうございます。来春も来園者に楽しんでいただけるよう、ご協力のほど、よろしくお願い致します。

 

補足:調査・観察日

・開花数調査 2023/4/03(事前 3/20)

・結実調査  2023/05/11

・下草刈り 2022/12/10, 2022/12/24

 

・忌避剤設置 イノシシ侵入状況により適宜

【参考文献】

 

[1] 河野昭一,植物の世界(草本編上)(ニュートンムック).2001

 

*1 カタクリとポリネータ(p.32-33) 

観察された送粉昆虫のリストが掲載されています。ただし、観察場所が富山県と埼玉県で、大阪とはカタクリの開花時期や生息する昆虫種が異なり、掲載されている昆虫がくろんど園地のカタクリの開花時期に現れるとは限りません。

 

*2 ゆるやかに入れかわる集団(p.30-33)

カタクリの群集の更新について、調査の結果が解説されています。

 

*3 10年近くかかって花開く(p.20-23)

カタクリが実生から開花可能な個体へと成長する様子が解説されています。発芽してから開花までは平均8年だそうですが、環境が異なるので、大阪でも8年で開花するかどうかはわかりません。

 

[2]マルハナバチの仲間の識別

 

 開花数調査中に飛んできて巣穴に入ったマルハナバチについては、時期的に越冬した女王バチだと思います。腹部の途中に白みがかった黄色い帯が写真からも観察されたので、京都九条山 自然観察日記 https://net1010.net/2012/04/id_4326/ の記事を参考に、オオマルハナバチではないかと思っていました。ただ、大阪の生駒山系にオオマルハナバチが生息しているのかが怪しく、くろんど園地では初夏にコマルハナバチをよく見ていたので、もう少し調べて見ると、虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」 http://lucanidae.blog.fc2.com/blog-entry-114.html に帯だけでの判定は難しいと記載がありました。ということで、コマルハナバチかオオマルハナバチのどちらかで、コマルハナバチの可能性が高いのではないかと考えています。

 

[3] 西山自然保護ネットワークで活動されている方に伺った話し

京都西山の小塩山に自生するカタクリと京都府天然記念物のギフチョウの保護活動をされている団体です。

http://nishiyamanet.sakura.ne.jp/

 

(2023/5/13 ます)

 

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