No.164 ウツギの花と共に暮らす、

初夏の妖精 ウツギヒメハナバチ

写真1
写真1

 ぬかた園地から大阪側への帰り道、満開のウツギの花に、黒っぽい小さなハチがだいだい色の花粉を集めて花粉だんごを作っています(写真1)。体長1cmほどのウツギヒメハナバチ*1です。ウツギ*2の花が咲くころに現れて、花が散る頃には姿を消している、初夏の風物詩です。

写真2
写真2

 ウツギの花から少し歩くと、斜面に露出した岩の上で、黒っぽい小さなハチがたくさん飛んでます(写真2)。目をこらしてみて見てみると、さっき花粉を集めていたのと同じウツギヒメハナバチのようで、20匹くらいいます。岩は風化が進み、穴や裂け目がたくさんあり、ハチが穴に頭を突っ込んでは、別の穴に飛んで行きます。

写真3
写真3

 あれっ? 数匹のハチがかたまって激しく動いてます。複数のオスが交尾相手のメスを奪い合っているようです(写真3)。オスには頭部に淡黄色の模様がついているのでメスと区別でき、ここには少なくとも4頭のオスがいます。そう、ここは巣穴*3なんです。さっき、ハチが穴に頭を突っ込んでは、別の穴に飛んで行っていたのは、メスを探していたのでしょうね。

写真4
写真4

 しばらく、様子を見ていると、花粉だんごを後ろ足につけたメスが一頭やってきました。巣穴のまわりを少しうろうろした後、巣穴に入りました(写真4)。この時、先ほどのようにオスが争うことはありませんでした。メスが巣穴に入った後、しばらく待ってみましたが、メスが出てくるところは見られませんでした。この巣穴で幼虫を育てていくのでしょうね。

 ウツギの花が咲き始めるころ、オスがメスより先に巣穴で羽化して地上に出てきて、交尾・養育用の巣穴を新たに作ります。深さは10~30cmくらいあります。その後、数日遅れて羽化したメスは、オスと交尾し、ウツギの花で集めた花粉と蜜をだんごにして巣穴に持ち込み、だんごの中に卵を一個生みます。オスは羽化して1週間くらいで役目を終えて姿を見せなくなり、メスも2週間くらいで姿を見せなくなります*4。ウツギヒメハナバチが地上に姿を見せるのはおおよそ3週間、まさに初夏の妖精です。それから、生まれた幼虫はだんごを食べて成長し、一か月ほどで蛹(さなぎ)になり、来年のウツギの花が咲くころまで、地上に姿を現すことなく、巣穴で過ごします*4

 

 初夏を告げるウツギの花と共に暮らす、ウツギヒメハナバチの生態はなかなか興味深いですね。大阪府民の森の各園地でも、ウツギの花にウツギヒメハナバチが見つかれば、近くに巣が見つかるかもしれません。ウツギヒメハナバチはススメバチのように攻撃性は高くなく、メスに産卵管が変化した針があるだけです。素手でつかんだりしない限り、巣穴に近づいても危険性は低いです。ぜひ、初夏の妖精を楽しんでみて下さい。

(ます 2026/5/18)

【より深く知りたい方へ】 

 

*1 ウツギヒメハナバチの種類

 

ウツギの花粉で生きるヒメハナバチは、正確には、ウツギヒメハナバチと、少し小さいコガタウツギヒメハナバチの2種類がいます。ここでは両者をまとめて、ウツギヒメハナバチとしています。両者は、頭盾(とうじゅん:複眼の間で、あごとひたいの間の部分)の側面形状によって識別されます。今回、観察したハチは、写真からコガタウツギヒメハナバチと思われますが確証は持てません。識別方法は以下のWebサイトを参考にして下さい。

剣を携え旅をする 上森教慈(森林総合研究所)

https://aculeata-journey.jimdofree.com/ミツバチ上科/ヒメハナバチ科/

 

*2 ウツギと名がつく花とヒメハナバチの関係

 

ウツギの名がついた花はたくさんありますが、全てが同じなかま(科)ではありません。ウツギやマルバウツギはユキノシタ科、ツクバネウツギはスイカズラ科、コゴメウツギはバラ科、ノリウツギはアジサイ科、といったぐあいです。Webでの投稿写真を見てみると、ウツギヒメハナバチはウツギやマルバウツギで花粉を集めていて、他の科のウツギでは、花粉を集めていないようです。ちゃんと花を選んでいるのでしょうね。

写真5
写真5

*3 ウツギヒメハナバチの巣穴の場所

 

写真2では、風化が進んだ岩を巣穴にしていましたが、地面に穴を掘って巣穴を作りることが多いようです。写真5は写真2と同じ公園内で少し離れた場所で見つけた巣穴です。巣穴の左側に穴を掘ったあとの砂が積みあがっているところが見えます。

*4 ウツギヒメハナバチの生態

 

 暮らしぶりについては、ウツギヒメハナバチの営巣地として有名な、朝来市山東町 楽音寺の解説があります。また、営巣時の観察は、福井県今庄中学校の報告が詳しいです。この報告は、ウツギヒメハナバチの社会性を調査したものです。巣穴には多くのハチが集まりますが、ミツバチのように集団で役割りを分担して暮らすものではない(社会性をもたない)、「孤独的性格のものではあるとしつつ、雌蜂の造巣に対して、雄蜂の関連性は非常に大きく、交尾は勿論のこと、地上出現を容易ならしめ、雌蜂の坑道作りに大きな援助を与えている」と結論付けています。

 

・但馬の百科事典 ウツギノヒメハナバチ

https://tanshin-kikin.jp/tajima/953

 

・ウツギヒメハナバチの観察- 営巣の創設期を中心に -奥野宏(今庄中学校)

https://www.nature.museum.city.fukui.fukui.jp/shuppan/kenpou/25/25-33-38.pdf

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