No.124  カワトンボ* (Broad-winged damselfly)

 ゴールデンウイークの頃、京阪私市駅からくろんど園地に向かう渓流沿いを歩いていると、金属光沢をした約6cmくらいの中型のトンボが葉上に止まっているのを見ることができます。カワトンボです。今回は清流が存在していることの指標にもなるカワトンボを紹介したいと思います。

青っぽいカワトンボ(未成熟個体)
写真1 青っぽいカワトンボ(未成熟個体)

 カワトンボはトンボ目カワトンボ科のトンボで、名前の通り日本各地の渓流・清流に生息する日本固有のトンボです。正確にはイトトンボの仲間になります。カワトンボの前翅(はね)と後翅はイトトンボと同様に同じ形をしているので、翅の形からもイトトンボの仲間であることがわかると思います。英語名のDamselflyはイトトンボのことです。ちなみにトンボの英語名はよくご存じのようにDragonfly(ドラゴンフライ)です。

白っぽいカワトンボ(成熟オス)
写真2 白っぽいカワトンボ(成熟オス)      

 カワトンボは変異が多く、翅の色が透明であったり、茶色の色つきであったり、体の色も金属色であったり、白っぽいものまでいます。翅の色は生息する地域で異なるようで、くろんど園地のカワトンボの翅は透明です。白っぽい体のカワトンボは成熟したトンボになります(写真2)。姿の違いを見て楽しむのもよい自然観察になります。

 ところでカワトンボの止まり方に特徴があると思いませんか。お尻を突き上げる恰好で止まっていることがあります(写真1)。体温調整のためと書かれている書物1)もありますが、何をしているのかカワトンボさんに直接聞いてみたいですネ。  

茶色っぽいカワトンボ
写真3 茶色っぽいカワトンボ(メス(3))

 皆さんもトンボのつがいが、くっついて飛んでいるところを見たことがあると思いますが、トンボの種類によってつながっている場所が頭だったり、首だったりと決まっています2)。私はカワトンボがつながっているところをまだ見たことがないのですが、オスがメスの首をはさんでいるようです。機会があったら確認したいと思います。

 カワトンボの卵は渓流に浸かっているような倒木(朽木)の表面に産みつけられるそうです。シオカラトンボなどよく見るトンボは直接、水の中に産み落とすので、渓流に住むトンボは卵が流されないようにしているのでしょうか。幼虫は皆さんよくご存じのヤゴですが、幼虫期間が約2~3年と長いようですので、これも清流でエサが乏しい影響でしょうか。いろいろ想像して観察するのもファーブルさんになったようで楽しいですね。

 くろんど園地では4月頃から6月頃まで見ることができます。カワトンボが生活するためには清流が必要です。神奈川県や愛媛県ではカワトンボがレッドリストに含まれているようです。くろんど園地では渓流・清流に住む生物が多く見られますので、この環境を大切に守っていきましょう。

 

* 最近のDNA研究によってニホンカワトンボとアサヒナカワトンボに分類されるようになったようですが、変異が多く、素人には区別が難しいので、ここではカワトンボとさせていただきました。

1)「トンボの不思議」新井 裕(丸善出版 2013)

2)シオカラトンボは頭でつながり(写真4)、ハグロトンボは首でつながっている(写真5)のがわかると思います。イトトンボの仲間の交尾はハート型に見えるので、皆さんも確認してみてください。どちらもくろんど園地で撮影しました。

3)オスとメスの見分け方ですが、翅の先端部に色のついたところ(縁紋)があります。白がメスで赤褐色がオスとのことです。他にも見分け方はあるのですが、素人が見て判別しやすい例を挙げました。

(2023/3/8 大西)

シオカラトンボの交尾
写真4 シオカラトンボの交尾
ハグロトンボの交尾
写真5 ハグロトンボの交尾

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