No.57 ナナフシのなる木

 先週、これからのイベントの下調べをかねて、ちはや園地に行ってきました。とちゅう、道ばたに、虫に食べられているコクサギがありました。近づいて見てみると、たくさんのナナフシがとまっていました。全く動かないので、まるで、コクサギにナナフシがなっているようです。

 ここでクイズです。上の写真1にはナナフシが何ひきいるでしょうか? 

写真をクリックして大きくしてみてください。)

 

 正解はコチラ(写真2)をクリックしてみて下さい。

 ナナフシは、すがたを植物のくきや葉をにせる(ぎたい:擬態)ことで、カマキリやトカゲ、鳥などの天てきから身を守っています。写真3では、からだを、くきや葉っぱの中心のじく(主脈)にそってとまっています。こん虫(昆虫)は6本の足を持っているはずですが、足が4本しかないように見えます(別のナナフシの足と重なって見づらいです)。葉っぱの主脈にそって残り2本の前足をピンとのばしていました。

 先日、ぬかた園地のあじさい園でも、ナナフシをたくさん見ました(写真4)。こちらも2本の前足をピンとのばしてとまっています(アジサイの花の上にとまっていてかくれているようには見えませんね)。移動するときには、6本の足を順番に使いながらなかなか素早く移動します(動画1)。

 ナナフシは漢字で「七節」と書きますが、体の節(体節)の数を数えてみると、ふく部(腹部)だけで11個ありました(写真3)。「七節」とは節が7つあるからではなくて、たくさん節があるという意味なんです。さらにややこしいのですが、あじさい園で見たナナフシはナナフシモドキという名前で、この「モドキ」というのは、ナナフシという名前の虫に似ているということではなくて、節が多い木という意味の七節に似ているということで名づけられたものです。ちなみに、ちはや園地に行くとちゅうで見たナナフシはエダナナフシという種類です。ナナフシモドキとエダナナフシは、よく見かけるナナフシで、しょっかく(触覚)の短いのがナナフシモドキ(写真4)、長いのがエダナナフシ(写真2の④)です。

 

 さて、コクサギにたくさんなっていたナナフシを見て少し気になることがありました。ナナフシのなかまは、ほとんどが、はね(翅)が退化していて移動はんいがせまいです。コクサギの葉が美味しいので、たくさんのナナフシが集まっていたのではないかと思いますが、コクサギが病気になったり、地面がくずれたりして、なくなってしまうと、ナナフシが新しいエサにたどり着けず、生きのびられなくなるのではないでしょうか。ナナフシがはなれた場所に移動するための方法として、興味深い研究がありました(参考文献)、「ナナフシが鳥に食べられた場合、植物の種子と同じように、ナナフシ体内の卵が消化されずに排泄され、それがふ化して分布拡大に寄与する」という仮説です。研究では「硬い卵をもつナナフシの卵を、ヒヨドリに食べさせて、たまごが無傷で排泄されること、ナナフシモドキでは、鳥の糞から回収した卵から実際にふ化が起こること」も確認できたそうです。ナナフシモドキは、ほとんどがメスで、メスだけでたまご(写真5:さまざまなナナフシのたまご)を生んではんしょくできるので、鳥に運ばれた場所で世代を重ねてはんしょくできる可能性があるのです。

 

写真5.さまざまなナナフシのたまご 出展:wikipedia Dragus CC 表示-継承 3.0 https://ja.wikipedia.org/wiki/ナナフシ#/media/ファイル:21_Phasmid_Eggs.jpg
写真5.さまざまなナナフシのたまご 出展:wikipedia Dragus CC 表示-継承 3.0 https://ja.wikipedia.org/wiki/ナナフシ#/media/ファイル:21_Phasmid_Eggs.jpg

  ナナフシがコクサギに集まって実ったかのようになり、鳥に運ばれて、はなれた場所へと移動するとすれば、昆虫なのに植物のようで不思議ですね。

 ナナフシはさがそうと思うとなかなかみつからないですが、里山を歩いているとふいに見つかります。夜行性で昼間は動かず、観察がしやすく、どくがあったり、さしたりすることもありません。夏休みの自由研究にいかがでしょうか。

(ます 2020/07/24)

 

参考文献)神戸大学 研究ニュース(2018/05/29). ナナフシは鳥に食べられて子孫を拡散させる!? ~飛べない昆虫の新たな長距離移動法の提唱

https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_05_29_01.html

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