No.151 ウシアブ (Horse fly)

 私にとって、くろんど園地で会いたくない虫の筆頭はウシアブ(写真1)です。人の足元あたりを旋回しながら飛び回り、何とかズボンに取り付こうとします。刺される(吸血)とかなり痛いです。刺すのはメスのみで卵の栄養確保のためのようです。蚊と同じですね。今回はこのウシアブの紹介です。

ウシアブ(オス;目の間に隙間無)
写真1 ウシアブ(オス; 目の間に隙間無)

 ハエ目アブ科の昆虫で、2cmくらいの大きなハエのような体形です。お腹の背中側にある黄色い三角形の列が目立ちます。和名は’ウシ’アブですが、英名は’ウマ’アブ(Horse fly)なんですね。上述したようにウシ、ウマなどの動物の他に人の血を吸うことがあります。普段は木の幹(写真2; 樹液も吸うようです)にとまっているところや吸水しているところ(写真3)を見ることが多いですが、そこは怖がる必要はありません。問題は産卵のころ(盛夏)で、メスは積極的に近寄ってきます。

木にとまっているウシアブ
写真2 木にとまっているウシアブ
吸水中のウシアブ
写真3 吸水中のウシアブ

ウシアブのメス(目の間に隙間有)
写真4 ウシアブのメス(目の間に隙間有)

 ここで、ウシアブのオスとメスの区別の方法をお教えします。人に向かってきたら、それはメスですが、それ以外に両目(複眼)の付き方で区別できます。写真1を拡大するとわかると思いますが、両目がくっついていたらそれはオスです。メスは写真4のように目の間が少し離れています*。それにしても大きな目ですね。

 メスのウシアブ対策ですが、オオスズメバチのところで紹介した静止の方法はウシアブには通用しません。オオスズメバチの攻撃は巣を守るためですが、ウシアブは吸血が目的なので静止しても、ラッキーと思い人の体にとまります。勇気を出してズボンにとまってからの様子を見ていると、あっちこっちとズボンの上を歩き回るだけですぐに吸血するわけではなさそうです。吸血する場所を探しているのでしょうか。私が刺されたときはウシアブにまったく気が付いていなかったときだったので、ウシアブにとまられてからかなり時間がたったあとと思われます。ウシアブの対処方法ですが、逃げてもしつこく追いかけてくるので、タオルなどを用いて、ひたすら追い払うことです。スズメバチのように集団で襲われるわけではないので、疲れますが、対応はできると思います。ウシアブが飛んできたら覚悟を決めて、がんばってください(ファイト!)。

 

 ウシアブは日本各地で見られ、くろんど園地でも6月頃から9月頃まで見ることができます。ウシアブが生きていくためには大型の哺乳動物が必要です。くろんど園地のウシアブの吸血対象はイノシシなのでしょうか。くろんど園地内でウシアブをよく見ることができるので、言い換えるとイノシシが多いのかもしれません。ある生き物の増減が他の生き物の増減に影響を与えることになりますので、生物数のバランスを維持していくことが大切ですね。

 

* この区別の方法はハエ・アブの仲間共通の方法のようです

    日高敏隆監修、「日本動物大百科9 昆虫II」 平凡社 

(2025/7/5 大西)

横から見たウシアブ
写真5 横から見たウシアブ
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