先日、くろんど園地の森林整備の日に、白旗池まで足をのばして、リス(ニホンリス)がクルミ(オニグルミ)を食べるところを観察してきました。のびをした体を幹にピタッとくっつけた変な姿勢ながら、器用に手を使ってクルミを回して鋭い歯でクルミをかじってました(簡易動画1)。
リスがクルミの実を食べる手順は図1のようです。
(a)リスはたわわに実ったクルミをもぎ取って、安定する場所まで運んでいきます。
(b)リスはクルミの皮をむいて、実(核果)の真ん中にある縫合線(2つの半球が接着した部分)に沿って削っていきます。ある程度削れたら、すきまに歯を入れてテコのようにしてクルミを真っ二つに割ろうとします。観察の時は4~5分位この動作を繰り返していましたが結局割るところは見られませんでした。うまく割れたら、中の種の部分を食べますが、1個のクルミを割って食べるには結構な時間がかかるようです。
(c)食べ終わったあと、殻を捨てるので、クルミの木の周りには、縫合線に沿って真っ二つ割れたクルミの殻がたくさん落ちています。
ところで、リスはエサが少なくなる冬に備えて、クルミなどの木の実を木の幹や地面に隠しておいて、あとで食べる”貯食”という習性を持っています。クルミは脂肪分が多く栄養も豊富で、丈夫な殻のおかげで保存が効きます。小さなリスにとって、クルミを運ぶ作業はなかなか大変なのですが、リスは貯食のおかげてクルミが実る秋から春にかけてエサを確保することができるわけです。
森林総合研究所がクルミに発信機を付けてリスがどのようにクルミを食べたのかを調査した結果(参考文献1)では、全体の58%が貯食されて、38%が後日食べられました。しかし、7%のクルミは運んだ後にも食べられなかったそうです(図2)。クルミにとっては、リスが種を遠くへ運んでくれたおかげで、新しい生育場所を拡げられて、リスにとっては長い期間にわたってクルミから栄養豊富な食べものを得る、というWin-Winの関係になっているのですね。
では、この関係はどのように作られていったのでしょうか?
実は、現在のクルミ(オニグルミ)の祖先であるオオバタグルミは大きく、表面に深いシワがいくつもあって、リスやネズミなどの貯食する小動物には、運びにくく食べにくいものだったようです(図3)。それが100万年前位から、種を運んでもらえるように、小さく、表面がなめらかに形を進化させていったらしいのです(参考文献2)。
余談ですが、オオバタグルミの化石を日本で最初に学会で報告したのは、詩人・童話作家の宮沢賢治で、『銀河鉄道の夜』の中にその実体験を素材としたシーンが出てきます。
リスがクルミを食べるしぐさは本当にカワイイのですが、リスとクルミが互いに関係しあって進化してきた不思議な過程に想いを巡らせてみるのもまた楽しいですね。
(ます 2020/10/14)
<参考文献>
1) ”ニホンリスの貯食行動によるオニグルミの更新".
森林総合研究所 研究成果選集.2012-7-11.
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/1994/p04.html
2) "生物の進化と古環境".
テラス 飯田市美術博物館ニュース.2009,VOL.083.
https://www.iida-museum.org/wp-content/uploads/2014/07/Terrace83.pdf
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