写真1はシダの葉脈ですが、音叉(おんさ)のような二又になっているのが
特長です。よく見ると分岐の先で更に二又になっているところもあります。
写真2 イチョウの葉の中央 写真3 葉の基部
イチョウの葉の中央付近を見ると葉脈は平行に走っているように見えます。しかし、よく見ると一本の葉脈が途中で二又に分かれ、その先でまた二又に分かれているのが分かります。イチョウの葉の葉脈は二又分岐を繰り返すのが特長です。
ご存知のように、葉脈は人で言えば血管のようなもので、光合成に必要な水や養分を葉に届け、葉が生産したデンプンや糖を根に運ぶための通路です。
太古の昔、植物の祖先は図1の左端に示すような、葉のない茎だけの二又分岐を繰り返す構造をしていたとされています。
シダ類は今から4億年ほど前に誕生しました。また裸子植物のイチョウの仲間は2億年くらい前に誕生しましたが、今でも葉脈の中に祖先の形質を残しています。
※葉の起源
植物の葉の起源は、茎の突起物の鱗状や棘状のものが伸びて葉に進化していったとの説がありますが、図1に示すように二又分岐を繰り返す内、分岐した枝部が合体して扁平になり葉になったという説もあります。
写真4 クヌギの葉脈
クヌギの葉脈は主脈を中心にして、左右に分かれる側脈があり、まるで木の幹と枝の構造と同じです。更に側脈と側脈の間は網目状の脈で縦横につながっていて複雑な構成となっています。
被子植物の誕生は1.5~1億年くらい前とされていますが、イチョウの葉と比べると、クヌギの葉は、水や栄養物を運搬する効率を上げるために進化した構造になっていると思われます。
写真5. ササの葉脈
ササの葉脈は主脈を中心に、左右に側脈が平行に並んでおり、側脈と側脈の間はあみだくじのようにランダムな階段状の細脈でつながっています。
その細脈の縦の脈は一本につながっているように見えますが、全ての縦脈は葉の基部で主脈につながっているようです。
ササはイネ科に分類されますが、草でもないし木でもない独特の形態をしています。一体ササはどのようにして生まれてきたのでしょうか? 不思議です。
おわりに
普段何気なく見ている木の葉ですが、葉の中を見ることはほとんどありません。しかしルーペで覗けば思いもかけない世界を見ることができます。
ルーペが無かったら葉を空に向けて透かすだけでも中の様子が分かります。
(因みに紹介した写真は葉を窓ガラスに貼り付け透かして撮影しました)
(2022/8/6 T.T)